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【第2回】ISO 9001: 2026における主な変更検討項目:DIS情報に基づく解説

作成者: Nemko|Apr 2, 2026

前回は、ISO 9001: 2026改訂の背景および全体像について整理しました。第2回では、現時点で公開されている情報およびDISDraft International Standard:国際規格案)段階の内容を踏まえ、改訂の検討ポイントを「要求事項の明確化」と「運用の実効性向上」という観点で整理します。最終条文は確定前であり、今後変更される可能性があります。

1.全体構造(HLS)に関する変更の考え方

ISO9001:2015は、他のマネジメントシステム規格との共通性を確保するための枠組みに基づき、章構成(410章)を採用しています。現時点では、新しい版においても、章立てを大幅に変更するというより、要求事項の記述明確化、用語の整合、運用のばらつき低減に向けた整理が中心となる可能性があります。

2.「組織の状況(4章)」に関する検討項目

1)外部・内部課題の明確化

現行規格では、組織の状況の理解として外部・内部の課題を決定することが求められていますが、その具体的な適用方法については組織ごとの解釈に委ねられている部分があります。

DIS段階では、この要求事項について、より実務的な適用を意識した記述の明確化が検討されています。

2)利害関係者のニーズの整理

利害関係者(interested parties)の特定およびニーズ・期待の把握についても、適用のばらつきが指摘されています。そのため、どのような利害関係者を対象とするか、またどの程度の深さで把握するかについて、整理が進められているとされています。

3.「リーダーシップ(5章)」に関する検討項目

1)トップマネジメントの関与

ISO9001:2015では、トップマネジメントのリーダーシップおよびコミットメントが強調されましたが、運用上は品質部門に依存するケースも見受けられます。

そのため、DIS段階では、トップマネジメントの役割がより実効的に機能するよう、責任および関与の内容を明確化する方向で検討されています。

2)品質方針の位置付け

品質方針についても、単なる文書としてではなく、組織の戦略および方向性と整合したものとして運用されることが求められる点が整理されつつあります。

4.「計画(6章)」に関する検討項目

1)リスクおよび機会への対応

リスクおよび機会に関する要求事項は、ISO9001:2015の特徴的な要素の一つですが、その適用方法については組織によって差があることが指摘されています。

DIS段階では、リスクおよび機会の特定から対応策の実施、評価までの一連のプロセスについて、より一貫性のある適用が可能となるよう整理が検討されています。

2)品質目標の設定と管理

品質目標については、測定可能性や達成状況の評価方法に関する明確化が検討されています。特に、目標と組織の戦略との関連性を明確にすることが重視されているとされています。

5.「支援(7章)」に関する検討項目

1)知識および力量の管理

組織の知識(organizational knowledge)および要員の力量に関する要求事項について、継続的な維持・更新の重要性が改めて整理されています。

2)コミュニケーションおよび情報管理

情報の伝達方法やコミュニケーションの有効性について、デジタル環境を踏まえた整理が検討されています。また、文書化した情報の管理についても、電子データの取扱いを前提とした考え方が整理される可能性があります。

6.「運用(8章)」に関する検討項目

1)外部提供プロセスの管理

外部提供(アウトソース、サプライヤー等)に関する要求事項は、現行規格でも重要な位置付けにありますが、サプライチェーンの複雑化を背景に、その管理方法の明確化が検討されています。

具体的には、外部提供者の評価、選定、監視の方法について、より実効性のある運用が求められる方向です。

2)変更管理

製品・サービスの変更管理に関する要求事項についても、変更の影響評価や承認プロセスの明確化が検討されています。

7.「パフォーマンス評価(9章)」に関する検討項目

1)データの活用

監視・測定・分析・評価に関する要求事項について、データの活用および分析の有効性に焦点を当てた整理が検討されています。

2)内部監査およびマネジメントレビュー

内部監査およびマネジメントレビューについては、形式的な実施ではなく、改善に結びつく運用が求められる点が強調される方向です。

8.「改善(10章)」に関する検討項目

1)不適合および是正処置

不適合の原因分析および是正処置の有効性について、再発防止の観点からの整理が検討されています。

2)継続的改善

継続的改善については、組織のパフォーマンス向上に結びつく活動としての位置付けが改めて整理されています。

9.用語および定義の見直し

ISO 9001: 2026では、用語および定義についても見直しが検討されています。特に、他のマネジメントシステム規格との整合性を確保するための調整が行われる可能性があります。

10.現時点での理解の位置付け

本記事で整理した内容は、現時点で公開されている情報およびDIS段階の検討内容に基づくものです。したがって、以下の点に留意が必要です。

    • DISは確定版ではなく、今後のコメント解決および次段階で条文が変更される可能性があります。
    • 新たな要求事項が追加または削除される可能性があります。
    • 解釈に関する詳細は今後のガイダンスで示される可能性があります。

まとめ

改訂は「新規要求の大幅追加」より「既存要求の明確化と実効性向上」を志向する可能性があり、特に、組織の状況、リーダーシップ、リスクと機会、外部提供、データ活用が重要領域として整理されます。

次回(第3回)は、ISO9001改訂が品質マネジメントシステムの運用に与える影響について、現時点の情報に基づき整理します。

 

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