ISO 9001、ISO 14001、ISO 45001を統合マネジメントシステムとして運用している企業では、今後、次のような疑問が増えてくると考えられます。
「3規格の改訂時期が異なる場合、いつマネジメントシステムを変更すればよいのでしょうか」
2026年8月27日時点では、実際に3規格の改訂・発行スケジュールには明確なズレが生じています。
結論から言えば、3規格の新版がすべて出そろうまで待つのではなく、正式に発行された規格と確定した移行ルールに順次対応しながら、統合マネジメントシステム全体は段階的に更新していく考え方が現実的です。
ただし、まだ発行されていない規格や、確定していない移行条件を先取りして変更する必要はありません。
まず、3規格の現在地を整理する
2026年8月27日時点の状況は次のとおりです。
【ISO 14001】
ISO 14001:2026が2026年4月15日に発行済み。
【ISO 9001】
第6版はStage 60.00「International Standard under publication」。ISO/TC 176/SC 2は2026年9月16日の発行を予定。
【ISO 45001】
ISO/DIS 45001(Edition 2)を開発中。2026年8月27日時点ではStage 40.20「DIS ballot initiated: 12 weeks」。ISO/TC 283は、改訂版について2027年頃の発行を想定。
ISO 14001:2026は、ISOが2026年4月15日に正式発行しています。
ISO 9001については、ISO公式カタログで第6版がStage 60.00「International Standard under publication」とされ、発行年月は2026年9月とされています。さらにISO/TC 176/SC 2は2026年8月7日、ISO/FDIS 9001が承認されたことを公表し、2026年9月16日の発行を予定していると発表しています。
一方、ISO 45001はまだDIS段階です。ISO中央規格台帳ではISO/DIS 45001(Edition 2)がStage 40.20であり、ISO/TC 283は2023年の改訂決定時に、改訂版の発行は2027年頃になるとの見通しを示しています。
つまり、3規格が同時期に正式発行され、一斉に切り替わる状況ではありません。
「ISO 45001が出るまで待つ」は前提にしない
統合マネジメントシステムを運用しているからといって、ISO 9001、ISO 14001、ISO 45001の新版への対応をすべて同じ日に実施しなければならないわけではありません。
認証を維持する企業にとって重要なのは、それぞれの規格について正式に決定される認証移行条件や期限に従うことです。
したがって、「ISO 45001の新版が発行されるまで、ISO 14001やISO 9001への対応も待つ」という考え方を前提にすることには注意が必要です。
特にISO 14001:2026は既に正式発行されています。
ただし、ここで「新版が発行されたこと」と「認証移行の具体的な条件が確定したこと」は分けて考える必要があります。
ISO 14001:2026の移行ルールは引き続き正式情報を確認
Global Accreditation Cooperation Incorporated(Global ACI)の会員による30日投票の結果、ISO 14001:2026の認定・認証に関する移行要領文書案は承認されませんでした。
各国の認定機関(ノルウェー認定協会、日本適合性認定協会など)はGlobal ACI事務局から2026年7月初旬にその旨の通知を受領しており、2026年7月28日の更新時点ではGlobal ACIの移行文書は公開されていません。このため各認定機関も、自らの移行要領を発行できない状況であると説明しています。
したがって、ISO 14001:2026について「移行期限は必ず○年間」「○年○月までに移行しなければならない」といった未確定の条件を、現時点で断定することは適切ではありません。
なお、Global ACIは単に「旧IAF」という位置付けではなく、IAF(International Accreditation Forum)とILAC(International Laboratory Accreditation Cooperation)の統合によって設立され、2026年1月1日から運用が開始された新組織です。
ISO 14001:2026への認証移行については、今後公表されるGlobal ACI、JABなどの認定機関、および各認証機関の正式情報を確認することが重要です。
ISO 9001も「発行予定」と「移行条件」を分けて考える
ISO 9001第6版については、2026年9月16日の発行が予定されています。
一方、ISO公式ページでは、ISO 9001:2015の認証取得組織には新版への移行期間が設けられることが説明されていますが、2026年8月27日時点で具体的な認証移行期間や審査条件をこの記事で確定事項として示せる段階ではありません。
そのため、ISO 9001についても、まず正式な第6版の発行を確認し、その後に公表される認証移行の条件を確認して対応することが重要です。
「9月16日に規格が発行される予定だから、その日までにQMSの変更を完了しなければならない」という意味ではありません。
ISO 45001はまだDIS段階
ISO 45001については、さらに状況が異なります。
2026年8月27日時点では、ISO/DIS 45001(Edition 2)が開発中であり、ISO中央規格台帳のステージは40.20です。
次期ISO 45001の最終的な要求事項、正式な発行時期、認証移行条件はいずれも確定していません。
したがって、現段階でISO/DIS 45001を根拠として統合マネジメントシステムを全面的に変更することは適切ではありません。
ISO 45001については情報収集と影響予測を進めながら、正式版の発行を待ってギャップ分析を行うという対応が基本になります。
統合マネジメントシステムは「共通部分」と「規格固有部分」に分けて考える
では、3規格の改訂に合わせて、統合マネジメントシステムを3回全面改訂しなければならないのでしょうか。
必ずしもそうではありません。
ISOのマネジメントシステム規格では、Harmonized Structure(HS:調和構造)が採用されています。
ISO/IEC DirectivesのAnnex SLでは、マネジメントシステム規格に対し、共通する箇条番号、箇条の順序、タイトル、共通テキスト、用語および定義を用いるHarmonized Structureが定められています。
ISO自身も、HSによってマネジメントシステム規格間の整合性と互換性が高まり、複数のマネジメントシステム規格の要求事項を一つの統合マネジメントシステムで満たそうとする組織に特に有用であると説明しています。
このため、改訂への影響を評価する際には、大きく次の二つに分けて考える方法が有効です。
① 共通するマネジメントシステム部分
例えば、組織の状況、利害関係者、リーダーシップ、リスクと機会、力量、コミュニケーション、文書化した情報、内部監査、マネジメントレビュー、是正処置などです。
これらは複数のマネジメントシステム規格に共通する構造を持つため、一つの統合プロセスとして運用している企業も少なくありません。
② 規格固有の部分
品質マネジメントに固有の要求事項、環境マネジメントに固有の要求事項、労働安全衛生マネジメントに固有の要求事項です。
改訂時には、規格固有の変更とHSに関連する共通部分への影響を切り分けて評価することで、不要な重複改訂を抑えやすくなります。
「共通構造」と「要求事項が同じ」は別の話
ここで注意したいのは、ISO 9001、ISO 14001、ISO 45001がHarmonized Structureを採用しているからといって、三つの規格の要求事項がすべて同一になるわけではないという点です。
Annex SLでも、Harmonized Structureを共通の核としながら、個々のマネジメントシステム規格では、その分野に必要な固有要求事項を追加することが想定されています。
したがって、「共通部分を一度変更すれば、3規格への移行がすべて完了する」と考えることも適切ではありません。
共通プロセスの変更が各規格の要求事項を満たしているかを確認するとともに、品質、環境、労働安全衛生それぞれの固有要求事項について個別にギャップを確認する必要があります。
Nemko Japanが考える実務的な進め方
統合マネジメントシステムを運用している企業では、「ISO 45001が発行されるまで何もしない」のではなく、確定した情報から段階的に対応する方法が現実的です。
例えば、次のような進め方が考えられます。
第1段階:現在の統合マネジメントシステムの構造を整理する
まず、どのプロセスや文書をISO 9001、ISO 14001、ISO 45001で共通化しているのかを確認します。
共通規程、内部監査、マネジメントレビュー、力量管理、変更管理、是正処置などについて、「3規格共通」「2規格共通」「規格固有」のどこに該当するかを整理しておくと、改訂影響を評価しやすくなります。
第2段階:ISO 14001:2026の変更影響を評価する
ISO 14001:2026は既に正式発行されています。
まず新版と現在の環境マネジメントシステムとの差異を確認し、変更が必要となる部分を特定します。
ただし、認証移行期限や追加審査時間などについては、正式な移行要領が確認できるまで未確定事項として管理します。
第3段階:ISO 9001第6版は正式発行後に確定版で評価する
ISO 9001については2026年9月16日の発行が予定されています。
FDISやこれまでの公開情報から準備を進めることは可能ですが、正式なギャップ分析とシステム変更は、発行された国際規格の確定文書を基準に行うことが重要です。
第4段階:共通部分は将来変更しやすい設計にする
ISO 14001、ISO 9001への対応に伴って、組織の状況、リスクと機会、力量、内部監査、マネジメントレビューなど共通部分を変更する場合、必要以上に規格ごとに別々の仕組みを作らないことがポイントです。
ISO 45001も今後改訂されることを念頭に、後から変更や追加がしやすい構造としておくことで、重複作業を抑えられる可能性があります。
第5段階:ISO 45001は正式版発行後に確定要求事項とのギャップを確認する
ISO/DIS 45001の情報は、将来影響を把握するための情報収集には活用できます。
しかし、まだ確定していない要求事項を自社の正式な仕組みとして先行導入することとは区別する必要があります。
正式版が発行された段階で、既にISO 9001およびISO 14001への対応で更新した共通部分も含め、最終的なギャップ分析を行うことが重要です。
「正式に決まったこと」と「未確定事項」を管理表で分ける
複数規格を統合して運用する企業では、改訂情報そのものを変更管理の対象として整理しておく方法も有効です。
例えば、規格ごとに次の情報を管理します。
このとき、「確定」「予定」「開発中」「未公表」といったステータスを明確に分けておくことで、未確定情報に基づく過剰な対応を防ぎやすくなります。
「一括移行」ではなく「一つのシステムを段階的に更新する」
統合マネジメントシステムのメリットは、3規格を必ず同じ日に改訂することではありません。
むしろ、一つの経営・管理システムとして整合性を保ちながら、それぞれの規格の正式な発行時期と認証移行ルールに合わせて、必要な部分を段階的に更新できることにあります。
2026年8月末時点で重要なのは、
という考え方です。
ISO 14001:2026への対応、今後発行されるISO 9001第6版への対応、そして将来のISO 45001改訂への対応を、「三つの別々のマネジメントシステム改訂」と捉えるのではなく、「一つの統合マネジメントシステムを段階的にアップデートするプロセス」として管理することが、効率的な対応につながります。
Nemko Japanからお伝えしたいこと
2026年8月27日時点では、ISO 14001:2026は発行済み、ISO 9001第6版は発行直前、ISO 45001第2版はDIS段階と、3規格の進捗には明確な差があります。
そのため、3規格がそろうことを待ってから一括して対応するという考え方ではなく、規格の発行状況と認証移行ルールを個別に確認しながら、統合マネジメントシステム全体を計画的に更新していくことが重要です。
特に、規格の正式発行日と認証移行期限は別の情報です。
また、ISOが規格を発行した後、認証移行の具体的な条件についてはGlobal ACI、認定機関、認証機関などから公表される正式情報を確認する必要があります。
Nemko Japanでは、ISO 9001、ISO 14001、ISO 45001の改訂状況と認証移行に関する公式情報を継続的に確認し、認証取得企業の皆様に最新情報をお伝えしていきます。
ISOマネジメントシステム規格の改訂情報、認証移転審査、移行審査、改訂規格解説セミナーなどのお問い合わせは、japan@nemko.comまでご連絡ください。