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既存ISO認証を活かす!統合マネジメントシステム構築の進め方

作成者: Nemko|Feb 26, 2026

【1. 導入:なぜ今ISO統合が注目されているのか?】
現在、多くの企業がISO 9001(品質)、ISO 14001(環境)、ISO 45001(労働安全衛生)など複数の認証を取得し、運用しています。
一方で、各マネジメントシステムが個別に管理・運用されている場合、次のような課題が顕在化しやすくなります。

  • ドキュメントや手順の重複
  • 内部監査・マネジメントレビューの非効率
  • 認証維持に係る工数・費用の増大

このような背景から、複数の規格要求事項を一つの仕組みとして運用する「ISO統合(IMS:Integrated Management System)」が注目されています。特に、すでにいずれかのISO認証を取得している企業にとっては、既存の文書・運用実績・教育体系などの資産を活用しながら段階的に統合を進めることができ、費用対効果の観点でも有力な選択肢となり得ます。

 

2. 統合マネジメントシステムの構築ステップ解説
▼現状分析:既存ISOの状況を把握
最初に着手すべきは、現在のISO運用状況の棚卸しです。規格ごとに以下を明確にすることで、統合の優先順位と実行範囲が見えてきます。

  • 使用している文書・記録・手順(重複、例外、運用実態)
  • 管理責任者と部門体制(主管部門、関与部門、決裁系統)
  • 年間スケジュール(内部監査、マネジメントレビュー、審査対応、教育など)

この棚卸しにより、共通化が可能な領域と、規格固有の要素(別管理が妥当な要素)を切り分けやすくなります。

▼統合方針と戦略の策定
次に、全社としての統合方針と進め方(戦略)を定めます。ここでは、次の観点を具体化します。

  • 経営方針との整合性(例:中期計画、ESG、SDGsの重点テーマとの関係)
  • 統合のスコープ(拠点、部門、対象規格、適用範囲)
  • 内部・外部の関係者への影響(顧客要求、法令順守、協力会社への展開など)

統合は単なる「運用の一本化」ではなく、経営資源(人・時間・データ)を再整理し、マネジメントの実効性を高めるプロジェクトとして位置付けることが重要です。

▼プロセス・文書・責任の統一
実際の統合作業では、以下の3要素を軸に共通化を進めます。

プロセスの再設計:
PDCAに基づき、各規格の要求事項を一つの業務プロセスとして整理し、実務の流れに落とし込みます。

文書体系の統一:
手順書、規程、帳票、記録の体系を統合し、版管理・承認・変更管理のルールを統一します。運用の一貫性とトレーサビリティの確保が要点です。

責任の明確化:
統合責任者(例:IMSマネージャー)または統合事務局の設置により、統合後の運用・維持の責任分担を明確にします。各分野の専門性は維持しつつ、意思決定と情報流通を一本化できる体制が望まれます。

 

3. 既存ISO認証を活かした統合の実践手法
▼クロスチェックとギャップ分析
既存の認証規格間で、重複や不足を「見える化」することが統合の起点になります。この際、ギャップ分析(Gap Analysis)を実施し、次を評価します。

  • 同一内容が複数規格で求められている箇所(共通化候補)
  • いずれかの規格でのみ必要な要素(固有要求として維持)
  • 審査・更新・監査のタイミングの差異(統合の阻害要因と対策)

この結果を基に、「統一すべきもの」と「別管理すべきもの」を合理的に判断しやすくなります。

▼共通業務の標準化
統合効果が出やすい共通業務は、標準化の中心として再設計が可能です。例は次のとおりです。

内部監査:
規格横断の監査プログラムを策定し、チェックリストを統合します。監査員の力量要件(分野別の知識)も併せて管理します。

文書管理:
単一の文書管理フローとフォーマットを採用し、変更管理と記録管理を統一します。

マネジメントレビュー:
全規格を同時に扱うレビューとして、方針、目標、KPI、監査結果、是正処置、重要リスクと機会を俯瞰的に審議します。

標準化により、業務負担の軽減と、運用の質(データの整合、判断の一貫性)の向上を両立しやすくなります。

 

4. プロジェクト推進上の注意点と成功のカギ
▼部門間調整とコミュニケーション
統合プロジェクトで障壁となりやすいのが、部門間の縦割り意識とサイロ化です。特に、品質・環境・安全衛生が別組織として独立している場合、統合に対する抵抗や、優先順位の不一致が生じることがあります。

そのため、次のような運用設計が有効です。

  • 統合プロジェクトチームの横断的編成(各部門代表者の参画)
  • 早期の情報共有(目的、範囲、期待効果、変更点の明確化)
  • ワークショップの実施(共通プロセスの合意形成、用語統一、KPI整合)

▼段階的統合と審査対応
いきなりフル統合を目指すのではなく、段階的アプローチが現実的です。例は次のとおりです。

  • 文書・記録の整合から着手(版管理、フォーマット、保管ルールの統一)
  • 内部監査・マネジメントレビューの部分統合(共通テーマから統合)
  • 認証審査の統合化(統合審査の可能性を含め、審査計画を最適化)

また、認証機関との早期の相談も重要です。統合審査の適用可否や、審査の進め方は、組織の体制・適用範囲・成熟度により異なります。

 

5. まとめと考察:統合による価値最大化のために
すでにISO 9001・ISO 14001・ISO 45001等を取得している企業にとって、統合マネジメントシステムの導入は、運用を合理化するだけでなく、経営と現場を結び付け、組織全体の整合性を高める機会になり得ます。

ただし、成功のカギは「形式的な統合」ではなく、実際の業務プロセスと経営戦略に結び付いた統合設計にあります。企業の規模や体制に応じた段階的な実行計画を立て、全社で統合の目的と価値を共有しながら進めることが、継続的な改善と成果につながります。

 

マネジメントシステム認証に関するお問い合わせ:
MS認証部
メール:japan@nemko.com / 電話:0596-24-7755