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ISO 9001・ISO 14001・ISO 45001を一元運用する「統合マネジメントシステム(IMS)」の基本:共通構造(Annex SL/調和させる構造)を活用した進め方

作成者: Nemko|Feb 24, 2026

1. 導入:ISO統合マネジメントシステムとは何か?

ISO規格は、企業や組織がマネジメント活動を体系的かつ効果的に運用するための国際規格です。ISO 9001(品質)、ISO 14001(環境)、ISO 45001(労働安全衛生)は、それぞれ対象領域は異なるものの、いずれも「マネジメントシステム」という共通の枠組みに基づいています。

近年、複数のISOマネジメントシステム規格(MSS)を一つの仕組みとして運用する、統合マネジメントシステム(IMS:Integrated Management System)への関心が高まっています。複数認証を保有する組織にとって、重複業務の削減、監査・運用コストの合理化、経営判断とマネジメントシステムの整合を図るうえで有効なアプローチになり得ます。

 

2. 共通構造(Annex SL)に基づく3規格の共通項
▼共通の章立てとその意図
ISO 9001・ISO 14001・ISO 45001を含む多くのマネジメントシステム規格は、ISO/IEC専門業務用指針(ISO/IEC Directives)で定める共通構造(Annex SLのAppendix 2。近年は「調和させる構造(harmonized structure)」として扱われます)に沿って構成されています。

この共通構造により、規格の章構成(1~10)が統一され、複数規格を同時に扱う際の共通化・統合運用が進めやすくなります。
1 適用範囲
2 引用規格
3 用語及び定義
4 組織の状況
5 リーダーシップ
6 計画
7 支援
8 運用
9 パフォーマンス評価
10 改善

▼用語・定義の整合
共通構造では、共通用語及び中核となる定義の考え方も示されており、複数規格で用語の整合が図られます。これにより、社内教育や理解の統一、規格間の要求事項の対応付けが行いやすくなります。

 

3. 共通化できる内容とその具体例
▼戦略的計画とリスクベースの考え方
3規格はいずれも「組織の状況(4)」「計画(6)」等を通じて、外部・内部課題や利害関係者の期待を踏まえ、リスクと機会に対処する計画的運用を求めます。このため、経営上の課題認識や事業戦略と、品質・環境・労働安全衛生の各活動を、同一の枠組みで整合させやすくなります。

▼文書化した情報の管理、内部監査、マネジメントレビュー
多くの組織で共通化の効果が出やすいのが、以下の運用プロセスです。
・文書化した情報の管理(規程類、手順、記録の管理方法の統一)
・内部監査(統合監査として一度の監査で複数規格の適合性・有効性を確認)
・マネジメントレビュー(統合レビューとして、全体のパフォーマンス、重要なリスクと機会、改善の優先順位を俯瞰的に議論)

これらを統合設計することで、重複作業の削減と、判断の一貫性向上が期待できます。

 

4. 統合マネジメントシステム構築の実践ステップ
▼方針の整合
初期段階では、品質・環境・労働安全衛生の各方針を、矛盾のない「統合方針」として整合させることが重要です。統合方針は、組織の目的・方向性に沿い、利害関係者の期待や順守義務等も踏まえ、実務運用に落とし込める表現にします。

▼役割と責任の明確化
統合運用では、分野ごとの責任者の連携と、役割・責任(権限を含む)の明確化が重要です。縦割りを避けるため、以下を具体化します。
・統合した運用プロセス(例:リスク評価、教育訓練、是正処置)の主管部門と支援部門
・情報共有の仕組み(定例会、統合KPI、変更管理のフロー等)
・内部監査の計画・力量管理の統一

 

5. 導入効果と注意点・まとめ
統合マネジメントシステムを導入・成熟させることで、一般に以下の効果が期待されます。
・業務の効率化:文書、監査、レビュー等の重複排除
・コストの合理化:監査対応・教育訓練・維持管理工数の低減
・組織全体の整合性強化:経営課題と現場活動のつながりを明確化し、優先順位を統一

一方、導入時の注意点として、以下を推奨します。
・形式的な統合(体裁だけ合わせる)に留めず、プロセスの目的と成果(有効性)に基づいて統合範囲を設計する
・各規格固有の要求事項(例:環境側面評価、危険源の特定・リスクアセスメント等)を統合の中で見落とさないよう、分野専門性を活用する

まとめとして、ISO 9001、14001、45001は、共通構造(Annex SL/調和させる構造)により整合が取りやすい設計となっています。組織は、共通要求事項を統合運用しつつ、規格固有の要求事項を適切に組み込むことで、リスクの俯瞰、資源配分の最適化、ガバナンス強化に寄与する運用が可能になります

 

 

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