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ISO IEC 42001 【第7回】 AIリスクをどう扱うか――リスクベースアプローチの実務

作成者: Nemko|Jul 30, 2026

はじめに

AIを活用する企業にとって、リスク管理は導入の障害ではなく、継続的に活用するための前提条件です。日本のAI事業者ガイドラインは、対策の程度をリスクの大きさに対応させるリスクベースアプローチを採用しており、AIに関する取り組みは一律ではなく、影響の大きさや発生可能性に応じて進めることが重要だと示しています。また、ISO/IEC 23894は、AI特有のリスクを組織の活動や機能に統合して管理するためのガイダンスを提供しています。

1. AIリスク管理が必要な理由

AIのリスクは、単なるシステム障害や誤作動だけではありません。誤情報、偏り、不透明な判断、プライバシー侵害、セキュリティ上の脆弱性、意図しない利用、社会的混乱など、技術面と社会面の両方にまたがることが特徴です。AI事業者ガイドラインでも、共通の指針として、人間中心、安全性、公平性、プライバシー保護、セキュリティ確保、透明性、アカウンタビリティなどが整理されています。

2. リスクベースアプローチとは何か

リスクベースアプローチとは、すべてのAI活用に同じ管理を求めるのではなく、リスクの大きさに応じて対策の強度や詳細度を変える考え方です。たとえば、社内文書の要約支援に使うAIと、採用判断や顧客評価に影響するAIでは、求められる管理の水準は同じではありません。人、取引、社会への影響が大きいほど、データの確認、バイアスの点検、人間によるレビュー、説明の仕組み、変更管理などをより慎重に整える必要があります。

3. AI特有のリスクはどこにあるのか

AIのリスクは、従来のITリスクと重なる部分もありますが、AIならではの特徴もあります。たとえば、学習データに偏りがある場合、出力の偏りが見えにくい形で残る可能性があります。また、利用開始後に入力傾向が変わることで、性能や出力の質が変化することもあります。さらに、生成AIでは、もっともらしいが誤った内容の出力が実務上のリスクとなり得ます。

4. 実務での評価・対応の進め方

AIリスク管理の実務では、まず自社がどのAIを、どの業務で、誰に影響する形で使っているかを整理することが出発点になります。そのうえで、影響範囲、人への影響、誤りや偏りが起きた場合の発見可能性、人間による修正可能性、説明可能性、変更時の見直し有無などの観点から評価を行うと整理しやすくなります。評価結果に応じて、人間のレビュー、利用制限、詳細な記録、定期的な性能確認などを強化することが有効です。

5. リスク管理を定着させるポイント

AIリスク管理を定着させるうえで重要なのは、リスク一覧を作ることそのものではなく、新しいAIを導入するとき、利用範囲が変わるとき、インシデントがあったときに、評価と見直しが自然に行われる仕組みを持つことです。AI導入時の確認プロセス、運用中のモニタリング、インシデント発生時の見直し、経営層への報告などを、マネジメントシステムの中に埋め込むことが有効です。

まとめ

AIリスク管理は、AI導入のための追加作業ではなく、継続的にAIを活用するための基盤です。リスクベースアプローチを採ることで、自社のAI活用実態に応じた過不足の少ない管理が可能になります。次回は、AIマネジメントシステムにおいて信頼性を支える重要な論点である、透明性・文書化・アカウンタビリティを取り上げます。

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