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高齢化時代に求められるISOマネジメントシステム 第2回 高齢化で変わる品質マネジメント

作成者: Nemko|Aug 27, 2026

序文

高齢化と生産年齢人口の減少は、企業を取り巻く事業環境の変化要因となっています。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計では、1564歳人口の長期的な減少が見込まれています。ただし、将来推計は一定の仮定に基づく社会全体の見通しであり、個々の組織に必要な対応を直接示すものではありません。自社の採用状況、人員構成、技能継承、顧客層及び供給体制と照合して利用することが重要です。

高齢化の影響が品質マネジメントにどのように現れるかは、業種、事業内容、人員構成及び顧客によって異なります。熟練者への業務の集中、後継者育成の長期化、顧客の利用条件の変化、外部提供者の供給能力などが、製品・サービスの適合や顧客満足に影響する場合があります。

ISO 9001は、高齢化への特定の対応策を定める規格ではありません。品質マネジメントシステムを確立、運用、維持及び継続的に改善し、顧客要求事項並びに適用される法令・規制要求事項を満たすための枠組みです。高齢化についても、品質マネジメントシステムの意図した成果に影響する場合に、組織の状況として検討することになります。

 

技能伝承は「教育記録」だけでは確認できない

熟練者が保有する知識には、手順書に記載された情報だけでなく、異常の兆候、設備の特性、顧客ごとの留意点、条件変更時の判断など、経験を通じて蓄積された知見が含まれます。

教育を実施して受講記録を残しても、担当者が必要な業務を安定して遂行できなければ、必要な力量が身に付いたことを十分に確認したとはいえません。教育の実施状況と、その結果として発揮される力量を区別して評価する必要があります。

ISO 9001:2015では、業務に必要な力量を明確にし、必要な力量を身に付けるための処置を講じ、その有効性を評価することが求められています。また、プロセスの運用並びに製品・サービスの適合に必要な組織の知識を明確にし、維持し、必要な範囲で利用できる状態にすることも重要です。

技能継承では、誰が保有するどの知識を、誰へ、いつまでに引き継ぐのかを整理します。その上で、作業結果、不適合の発生状況、判断の正確性、作業の安定性などを通じ、引継ぎが実務で機能しているかを確認することが重要です。

 

組織の知識を把握する

組織の知識は、手順書やデータベースに保存された情報だけではありません。過去の不適合への対応、設備調整の経験、顧客とのやり取り、工程条件を変更する際の判断など、製品・サービスの適合を支える知識も含まれます。

そのため、退職が目前となってから資料を作成するのではなく、どのプロセスや判断が特定の担当者に依存しているかを早期に把握する必要があります。

技能継承の方法には、手順書の整備、実作業の観察、判断理由の言語化、異常事例の共有、共同作業及び段階的な権限移譲などがあります。ただし、すべての業務に同じ方法を適用する必要はありません。業務の複雑さ、品質への影響、習得に必要な期間及び代替要員の状況に応じて選択します。

また、知識を保存すること自体を目的とせず、必要な人が必要な時点で利用でき、実際の業務成果につながる状態を維持することが重要です。

 

顧客の変化を要求事項へ反映する

高齢者の生活環境、身体機能及びデジタルサービスへの習熟度には個人差があります。そのため、年齢だけを根拠に顧客の要求を推定することは適切ではありません。

製品・サービスによっては、文字や表示の見やすさ、操作のしやすさ、包装の開けやすさ、説明方法、問い合わせ手段及び提供方法などに対する要求が変化する場合があります。こうした変化は、顧客の年齢構成だけではなく、問い合わせ、苦情、返品、事故、利用状況、アンケートなど、組織が入手できる情報から確認します。

品質マネジメントで重要なのは、「高齢者向け」という固定的な区分を設けることではなく、実際の利用者と利用条件に基づいて要求事項を把握することです。その情報を設計、表示、説明、提供方法及び顧客対応へ反映し、変更後の結果を確認します。

顧客満足に関する情報だけでは、利用しにくさや不満を十分に把握できない場合もあります。サービスの利用を途中で中止した人や、問い合わせを行わずに利用を断念した人の状況は、通常の満足度調査には表れにくいためです。利用件数、離脱、返品、繰り返し発生する問い合わせなども含め、製品・サービスに適した監視方法を検討することが重要です。

 

省人化・自動化による品質への影響

人手不足への対応や生産性向上を目的として、自動化、遠隔支援、AIなどのデジタル技術を導入する組織が増えています。しかし、技術の導入そのものが品質の向上を保証するわけではありません。

品質への影響を評価する際には、入力する情報の正確性、通常とは異なる条件への対応、システム停止時の代替方法、利用者の力量、変更内容の確認及び結果の検証方法などを考慮します。

従来は熟練者の経験によって支えられていた工程を自動化する場合には、どの処理をシステムへ委ね、どの判断を人が担うのかを明確にする必要があります。異常時や判断に迷う場合の連絡経路、処理を停止する条件及び復旧後の確認方法も、運用前に整理しておくことが重要です。

また、省人化によって作業者が減少しても、データの更新、出力結果の確認、システム保守及び障害対応などの業務が新たに生じる場合があります。削減できる作業だけでなく、導入後に必要となる管理業務も含めて効果を評価する必要があります。

 

外部提供者の供給能力を確認する

品質への影響は、自社内の人員や技能だけに限られません。特定の加工、保守、物流、検査又は部品供給を外部提供者へ依存している場合、その供給能力の変化が製品・サービスの適合や納期に影響する可能性があります。

公的統計は、人手不足や事業承継が社会的な課題であることを示す基礎情報となりますが、個々の外部提供者の供給継続能力を直接示すものではありません。外部提供者については、品質実績、供給能力、代替可能性、重要な技術への依存及び緊急時の対応など、取引上確認できる情報に基づいて評価します。

長期間の取引実績があっても、技術仕様や検査方法が特定の担当者だけに依存している場合や、代替先を十分に確認していない場合があります。供給への影響が大きい外部提供者については、現在の品質実績だけでなく、将来の供給能力や代替手段も含めて確認することが重要です。

これは、外部提供者の従業員の年齢情報を一律に収集することを意味しません。組織が必要とする製品・サービスを継続的に提供できるかという観点から、目的に適した情報を確認することが基本となります。

 

退職や配置転換を変更として管理する

退職や配置転換は、人事上の出来事であると同時に、品質マネジメントに影響する変更となる場合があります。担当者の変更によって、承認経路、顧客対応、設備設定、検査及び工程上の判断が変わる場合には、その影響を事前に確認する必要があります。

変更の際には、引継ぎに必要な期間、関連文書の最新性、代替要員の力量、権限及び責任、変更後の結果を確認する方法を明確にします。担当者を変更した後に不適合や問い合わせが増えていないかを確認することも重要です。

動画、遠隔支援又はAIを技能継承に利用する場合も、導入したことを成果とせず、実際の有効性を確認します。教育期間、作業結果、不適合、再作業、問い合わせなどの情報を用い、期待した効果が得られているかを評価します。

さらに、後継者を育成するだけでなく、特定の個人への依存を減らすことも検討できます。工程の簡素化、設備改善、標準化、複数要員への技能展開及び外部資源の活用など、業務の特性に応じた方法を選択することが重要です。

 

まとめ

高齢化と生産年齢人口の減少は、すべての組織に同じ対応を求めるものではありません。公的統計は社会全体の変化を把握するための基礎情報として活用し、自社への影響は、人員構成、技能、顧客及び外部提供者の状況に基づいて判断する必要があります。

品質マネジメントでは、技能継承、組織の知識、顧客要求、外部提供者及び変更管理が主な論点となります。技能継承は、教育記録や手順書の整備だけでなく、必要な力量が実務で発揮され、安定した結果につながっているかを確認することが重要です。

顧客要求については、年齢による先入観ではなく、実際の利用状況、問い合わせ、苦情及び返品などの情報から変化を把握します。また、省人化や自動化では、削減できる作業だけでなく、例外処理、人による確認、保守及び障害対応も含めて品質への影響を評価する必要があります。

ISO 9001を高齢化時代の経営に活用するとは、高齢化を新たな管理項目として追加することではありません。事業環境の変化が製品・サービスの適合と顧客満足に及ぼす影響を把握し、必要な力量、知識、プロセス及び供給体制を継続的に見直すことです。

 

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