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高齢化時代に求められるISOマネジメントシステム 第4回 高齢化と環境マネジメント

作成者: Nemko|Sep 3, 2026

序文

高齢化は、それ自体が直ちに組織の環境側面又は環境影響となるものではありません。しかし、高齢者を含む利用者の構成やニーズが変化し、それに応じて製品の仕様、サービスの提供方法、施設、配送、回収などが変更されると、資源使用、エネルギー消費、輸送及び廃棄物の発生状況にも変化が生じる可能性があります。

高齢化と環境マネジメントの関係を考える際は、高齢者人口の増加だけに着目するのではなく、それに伴って生じる製品、サービス及び事業活動の変化が、環境へどのような影響を及ぼすかを確認することが重要です。

高齢者や障害のある人にも利用しやすい製品、サービス及び生活環境の実現に向け、アクセシビリティに配慮した規格の策定と整備が進められています。経済産業省によると、関連規格には視覚的、聴覚的及び触覚的な配慮が含まれ、包装・容器、消費生活製品、施設・設備、情報通信及びコミュニケーションなど、幅広い分野が対象となっています。

ISO 14001:2026は、組織が環境側面、順守義務並びにリスク及び機会を管理し、環境パフォーマンスの継続的な改善を図るための枠組みを示す国際規格です。高齢化への対応についても、自社の活動、製品又はサービスとの関係を確認し、環境マネジメントシステムへ反映する必要があるかを判断することが重要です。

 

高齢化と環境マネジメントとの関係

高齢化は環境問題そのものではありませんが、人材確保、技能継承、外部提供者及び地域社会の変化を通じて、組織の環境マネジメントに影響する可能性があります。

国土交通省は、建設・インフラ分野において、高齢化などに伴う担い手不足を課題として示しています。ただし、この状況がすべての組織に同様に当てはまるわけではありません。

組織が確認すべきなのは、従業員や委託先の年齢ではなく、環境管理に必要な業務を継続できる体制です。設備の運転、環境測定、廃棄物管理、法令対応及び異常時対応について、必要な力量、手順、判断基準及び記録が共有されているかを確認します。

廃棄物処理、設備保守、環境測定、輸送などを外部へ委託している場合には、契約条件や法的要求事項に従って業務を継続できるかを確認することも必要です。

環境マネジメントでは、高齢化を一律に環境上のリスクとみなすのではなく、自社の人員体制、外部提供者及び地域のサービス提供条件に変化が生じていないかを確認します。変化を早めに把握し、必要な力量の確保、運用方法、緊急時の準備及び監視方法の見直しへつなげることが重要です。

 

製品及びサービスの変更による影響

高齢者を含む多様な利用者への配慮として、製品の重量、形状、表示、操作方法、情報提供又はサービスの利用手順を見直す場合があります。

こうした変更は、製品やサービスの利用しやすさに関係する一方、材料、部品、製造工程、エネルギー使用、輸送、保守及び廃棄にも影響する可能性があります。

製品を軽量化すると、材料使用量や輸送時の負荷が減る場合があります。しかし、強度や耐久性を確保するために、異なる材料や追加部品が必要になることもあります。音声、表示又は触覚による補助機能を追加すると、材料や部品の使用量が増える場合があります。一方で、操作しやすくなることで誤使用や故障が減り、製品をより長く使用できる可能性もあります。

包装や表示を変更する場合には、開封性や視認性だけでなく、材料使用量、製品保護、輸送効率、分別及び廃棄への影響も確認します。包装・容器には、内容物を保護するとともに、取扱方法、保管方法、製品情報及び廃棄方法を利用者へ伝える役割があります。

ただし、材料を追加すれば必ず環境負荷が増え、材料を削減すれば必ず環境負荷が減るとは限りません。製品の破損、返品、内容物の廃棄及び実際の分別状況を含め、製品全体への影響を確認する必要があります。

 

サービスの提供方法を変更する

高齢者を含む利用者が製品やサービスを利用しやすくするため、配送、訪問、移動販売、送迎又は遠隔対応を導入する場合があります。

利用者が店舗や施設まで移動する必要が減る一方、事業者側では、車両の走行、配送回数、燃料又は電力の使用、梱包材の使用が増える場合があります。遠隔対応によって移動や紙の使用が減っても、端末、通信設備及びデータ処理には電力が必要です。

このため、対面、訪問、配送又は遠隔のどの方法が環境上望ましいかを一律に判断することはできません。利用者と事業者の双方の移動、サービスの提供回数、配送距離、積載率、再配達及び使用する設備などを踏まえて確認する必要があります。

環境負荷の低減だけを優先すると、必要な製品やサービスを適切な時期に提供できなくなる可能性があります。一方、利便性だけを優先すると、輸送やエネルギー使用が増える場合があります。サービスの目的を維持しながら、配送経路、訪問日程、再配達、使用車両及び遠隔対応の範囲を見直すことが重要です。

 

施設及び設備の変更を確認する

高齢者を含む利用者や従業員への配慮から、照明、空調、昇降設備、自動ドア、案内表示、衛生設備又は休憩場所などを変更する場合があります。経済産業省が紹介するアクセシビリティ配慮規格も、施設・設備を対象分野に含めています。

施設や設備の変更は、利用しやすさや安全性に関係する一方、電力、水、保守部品、清掃及び設備更新時の廃棄物にも影響する可能性があります。

設備を追加するとエネルギー使用量が増える場合がありますが、効率の高い設備への更新や、利用状況に応じた運転制御によって、使用量を抑えられる場合もあります。

設備の導入だけで環境影響を判断せず、仕様、利用時間、稼働条件、保守方法、更新周期及び廃棄方法を確認し、実際の使用状況に応じて運用を見直すことが重要です。

 

使用後の分別、回収及び廃棄

高齢化に伴う変化は、製品やサービスを提供する段階だけでなく、使用後の分別、回収及び廃棄にも関係します。

環境省は、高齢化や核家族化の進展などに伴い、高齢者のみの世帯が増加し、日常的なごみ出しに課題を抱える事例が生じているとして、高齢者のごみ出し支援制度に関する手引きと事例集を公表しています。

製品の回収、再使用又は再資源化に取り組む企業では、利用者が実際に分別し、回収へ出せるかどうかも確認する必要があります。再資源化できる材料を採用していても、分別方法が分かりにくい、部品を取り外しにくい、回収場所まで持参しにくい、返却手続が複雑である場合には、想定した回収率に達しない可能性があります。

一方、戸別回収や訪問回収の導入は、利用しやすさの向上につながる場合があるものの、車両の走行距離、作業時間及びエネルギー使用量の増加を伴うことがあります。そのため、回収率だけでなく、回収方法、輸送及び作業条件を含めた環境負荷全体の状況を把握し、運用実態との整合性を確認することが考えられます。

 

ライフサイクルの視点から変更を確認する

高齢化への対応として製品、サービス、施設又は提供方法を変更すると、ある段階で環境負荷が減っても、別の段階で増える場合があります。

このため、変更した部分だけを見て環境負荷の増減を判断するのではなく、原材料の調達、設計、製造、輸送、使用、保守、回収及び廃棄までの流れを確認する必要があります。

ISO 14001におけるライフサイクルの視点は、すべての組織に詳細なライフサイクルアセスメントを一律に求めるものではありません。組織が管理できる範囲又は影響を及ぼせる範囲を考慮し、重要な環境側面に関係する段階を確認することが基本です。

環境影響を評価する際には、材料使用量やエネルギー消費など、一つの指標だけに依存しないことも重要です。製品の耐久性、修理、輸送、使用期間、廃棄量及び回収状況など、変更と関係する情報を組み合わせて確認します。

変更後は、材料やエネルギーの使用量、輸送、廃棄物、回収状況などを確認し、想定した結果が得られていない場合には、製品の仕様や運用方法を見直すことが重要です。

 

まとめ

高齢化は、それ自体が直ちに環境問題となるものではありません。しかし、高齢者を含む利用者のニーズ、人材確保、技能継承、外部提供者及び地域社会の変化を通じて、組織の環境マネジメントに影響する可能性があります。

組織が確認すべきなのは、従業員や利用者の年齢そのものではなく、高齢化への対応によって、自社の製品、サービス、施設及び運用条件にどのような変化が生じているかという点です。環境管理に必要な力量や手順が維持されているか、外部提供者が必要な業務を継続できるかを確認することも重要です。

製品やサービスを変更する場合には、利用しやすさだけでなく、材料、部品、エネルギー、輸送、保守、回収及び廃棄への影響も確認する必要があります。施設や設備、配送、訪問、遠隔対応などについても、変更した部分だけで判断せず、実際の利用条件や運用状況を踏まえて評価します。

また、ある段階で環境負荷が低減しても、別の段階で増加する場合があります。そのため、原材料の調達、設計、製造、輸送、使用、保守、回収及び廃棄までをライフサイクルの視点から確認し、変更後の結果に応じて製品の仕様や運用方法を見直すことが重要です。

ISO 14001は、高齢化に伴う事業上の変化を、環境側面、順守義務並びにリスク及び機会との関係から整理し、環境パフォーマンスの継続的な改善へつなげるための枠組みとして活用できます。

 

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