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NemkoOct 15, 20262 min read

ISO 9001:2026正式発行 第1回 ISO 9001:2026正式発行―2015年版から何が変わったのか

ISO 9001は、品質マネジメントシステム(QMS)の国際規格として、製造業、建設業、サービス業、医療、教育など、さまざまな分野の組織で利用されています。

ISO 9001:2015の発行から約11年を経て、2026年9月16日に第6版となるISO 9001:2026「Quality management systems — Requirements」が正式に発行されました。ISOの公式情報では、ISO 9001:2026が現行版となり、ISO 9001:2015及びISO 9001:2015/Amd 1:2024は旧版として位置付けられています。

今回の改訂は、ISO 9001の基本的な枠組みを全面的に作り替えるものではありません。ISOは、従来からの枠組みを基礎としながら、明確さ、使いやすさ、現在の事業環境との関連性を高めるための改訂と説明しています。

一方で、単なる文章表現の変更でもありません。品質文化、倫理的行動、リスクと機会、変更の計画など、組織が現在の品質マネジメントシステムを見直すうえで重要となる要求事項が明確化又は整理されています。

本シリーズでは、正式発行されたISO 9001:2026を基に、2015年版から何が変わったのか、既にISO 9001を運用している組織は何を確認すればよいのかを順に解説します。

 

1.ISO 9001:2026は2026年9月16日に正式発行

ISO 9001:2026は、DIS(Draft International Standard:国際規格案)、FDIS(Final Draft International Standard:最終国際規格案)などの規格開発段階を経て、2026年9月16日に正式な国際規格として発行されました。

ISOの規格ページでは、ISO 9001:2026について「Published」、Edition 6と表示されています。また、ISO/TC 176/SC 2も同日付で正式発行されたことを公表しています。

FDISの段階では、品質文化、倫理的行動、リスクと機会などが改訂の主要なテーマとして示されていました。

正式版が発行されたことで、これらを改訂案としてではなく、ISO 9001:2026の正式な要求事項として確認できる段階になりました。

したがって、これからの改訂対応では、DISやFDISで準備してきた内容をそのまま確定するのではなく、正式発行版の要求事項を基準として2015年版との差を確認することが出発点になります。

 

2.ISO 9001の基本的な考え方は維持されている

ISO 9001:2026でも、ISO 9001:2015で運用されてきた品質マネジメントシステムの基本的な考え方は維持されています。

序文では、プロセスアプローチを採用し、PDCAサイクルと組み合わせて品質マネジメントシステムを運用する考え方が引き続き示されています。

顧客要求事項を満たす製品・サービスを一貫して提供すること、顧客満足を向上させること、品質マネジメントシステムを継続的に改善することも、ISO 9001の基本的な目的として変わっていません。

一方、2026年版では、リスクに基づく考え方に加えて、機会に基づく考え方がより明確に整理されています。

また、ISOのマネジメントシステム規格に共通するHarmonized Structure(調和構造)との整合が図られており、品質、環境、労働安全衛生、情報セキュリティなど複数のマネジメントシステムを運用している組織にとっても、共通する構造として利用しやすい構成となっています。

ISO公式情報において、2026年版について、従来の仕組みを基礎とする「自然な発展」であると説明しています。

そのため、ISO 9001:2026への対応を「現在のQMSを一から作り直すこと」と捉える必要はありません。

まず確認したいのは、現在運用しているQMSが2026年版の要求事項をどの程度既に満たしているか、そして、どこに見直しが必要かという点です。

 

3.品質文化と倫理的行動が明確になった

ISO 9001:2026で特に注目される変更の一つが、箇条5.1.1「リーダーシップ及びコミットメント」です。

2026年版では、トップマネジメントが品質文化及び倫理的行動を促進することが明示されています。

また、プロセスアプローチ、リスクに基づく考え方及び機会に基づく考え方を促進することや、品質マネジメントシステムの有効性に説明責任を負うことも、トップマネジメントの役割として整理されています。

ISOの公式発表でも、今回の改訂では、リーダーシップ、品質文化、倫理的行動への重点が高められたことが主要な変更点として紹介されています。

ここで注意したいのは、「品質文化」という名称の新しい手順書や制度を作ること自体が要求されているわけではないという点です。

ISO 9001:2026では、組織の品質文化及び倫理的行動は、共有される価値観、姿勢、慣行、行動に反映されるという考え方が示されています。

したがって、品質を重視する姿勢が、トップマネジメントの意思決定、日常業務、問題への対応、コミュニケーション、改善活動などにどのように表れているかを見ることが重要になります。

このテーマについては、第2回で詳しく取り上げます。

 

4.リスクと機会を分けて整理された

ISO 9001:2015では、箇条6.1で「リスク及び機会への取組み」が規定されていました。

ISO 9001:2026では、この構成がより明確になっています。

箇条6.1.1では「リスク及び機会の決定」、箇条6.1.2では「リスクへの取組み」、箇条6.1.3では「機会への取組み」として整理されています。

リスクについては、適合する製品及びサービスを継続的かつ一貫して提供し、顧客満足を向上させる組織の能力に望ましくない影響を与える可能性を考えます。

一方、機会については、望ましい結果を実現又は向上させる方向から検討します。

ISOも2026年版について、リスクと機会をより明確に区別したことで、組織が有益な結果を積極的に追求するための取組みを行いやすくしたと説明しています。

これは、必ず「リスク一覧表」と「機会一覧表」を別々に作成するという意味ではありません。

重要なのは、リスクと機会を同じ言葉としてまとめて処理するのではなく、それぞれがQMSの意図した結果、製品・サービスの適合、顧客満足などにどのように関係するのかを考え、必要な取組みにつなげることです。

第3回では、箇条6.1を中心に、2015年版との違いを詳しく確認します。

 

5.「変更の計画」が具体化された

箇条6.3「変更の計画」は、ISO 9001:2026で新設された要求事項ではありません。

ISO 9001:2015にも箇条6.3は存在しており、品質マネジメントシステムの変更を計画的に実施する考え方が示されていました。

2026年版では、この考え方がさらに具体化されています。

変更の目的及び起こり得る結果、QMSの完全性、資源、責任及び権限などを考慮することに加えて、変更を実施するために必要な情報、関係者への伝達、変更の有効性の監視及び評価、変更結果のレビューまで含めて考える構造となっています。

つまり、変更を計画して実施するだけではなく、その変更によって意図した結果が得られたかまで確認する考え方が明確になっています。

組織では、設備、工程、ITシステム、人員配置、外部提供者など、さまざまな変更が行われます。

ISO 9001:2026への対応として、新しい「変更管理制度」を必ず設けるということではありません。

現在使用している設備変更、工程変更、設計変更、購買変更、組織変更などの仕組みの中で、QMSへの影響を適切に扱えているかを確認することができます。

第4回では、この箇条6.3について、実際の業務との関係から詳しく取り上げます。

 

6.文書化した情報も「何を残すか」だけではなく「利用できるか」で見る

ISO 9001:2026では、文書化した情報に関する表現についても整理されています。

重要なのは、文書や記録の数を増やすことではありません。

QMS及びそのプロセスを運用するために必要な情報が利用できる状態にあること、そして、必要な場合には、計画したとおりに実施されたことを示す証拠として文書化した情報を利用できることがポイントになります。

情報の媒体についても、紙でなければならない、電子データでなければならないという考え方ではありません。

組織の業務に適した形式で、必要な情報が必要なときに利用でき、適切に管理されていることが基本となります。

近年では、クラウドサービス、業務システム、電子承認、AIなど、情報を作成・利用する方法も多様化しています。

2026年版への移行を機に、「どの文書を追加するか」だけではなく、「現在のQMSを運用するために必要な情報が適切に利用できる状態になっているか」という視点から確認することが有効です。

 

7.評価結果を改善へつなげる流れが整理された

箇条9「パフォーマンス評価」と箇条10「改善」も、QMS全体の流れを見るうえで確認したい部分です。

ISO 9001:2026では、箇条10.1に「継続的改善」、箇条10.2に「不適合及び是正処置」が位置付けられています。

継続的改善では、監視、測定、分析及び評価並びにマネジメントレビューの結果などから改善の機会を決定し、必要な取組みにつなげる考え方が示されています。

これは、不適合が発生した場合だけが改善の契機ではないということです。

品質目標の達成状況、プロセスのパフォーマンス、顧客満足、内部監査、マネジメントレビューなど、QMSの運用から得られる情報を利用して、プロセス、製品・サービス、そしてQMSそのものを改善していくことができます。

第5回では、この「評価から改善へ」というつながりを詳しく取り上げます。

 

まとめ

ISO 9001:2026は、2026年9月16日に正式発行されました。

今回の改訂では、ISO 9001:2015の基本的な枠組みを維持しながら、現在の事業環境に合わせて要求事項の明確化及び整理が行われています。ISOは、今回の改訂について、明確さ、使いやすさ、現在の事業環境との関連性を高めながら、既存のISO 9001の枠組みを発展させたものと説明しています。ISO

特に確認したいのは、品質文化及び倫理的行動、リスクと機会の整理、変更の計画の具体化、文書化した情報、評価から改善へのつながりです。

ISO 9001:2026への対応は、「規格が変わったため新しい書類を増やす」というところから始める必要はありません。

まずは、ISO 9001:2015に基づいて現在運用しているQMSと2026年版の要求事項との差を確認し、既存の仕組みで対応できている部分と、見直しが必要な部分を整理することが出発点になります。

次回は、今回の改訂で特に注目される「品質文化」と「倫理的行動」について、箇条5.1.1を中心に詳しく見ていきます。

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