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NemkoOct 29, 20261 min read

ISO 9001:2026正式発行 【第5回:評価と改善を移行対応につなげる―ISO 9001:2026への移行で何を確認するか】

これまで4回にわたり、ISO 9001:2026の主要な改訂点を見てきました。

第1回では改訂の全体像、第2回では品質文化と倫理的行動、第3回ではリスクと機会、第4回では変更の計画を取り上げました。

シリーズ最終回では、これらを個別の変更点としてではなく、品質マネジメントシステム(QMS)全体の評価と改善につなげて考えます。

ISO 9001:2026では、箇条9「パフォーマンス評価」と箇条10「改善」が、QMSのPDCAサイクルにおけるCheckとActに位置付けられています。監視・測定、内部監査、マネジメントレビューなどから得られた情報を確認し、その結果を継続的改善へつなげる構造です。

2026年版への移行でも重要なのは、改訂された言葉だけを文書へ追加することではありません。

現在のQMSを評価し、2015年版からの違いが自社の仕組みにどのような影響を与えるのかを確認し、必要な改善につなげることが移行対応の中心になります。

 

1.箇条9は「情報を集める」ためではなくQMSを評価するためにある

箇条9.1では、組織が監視及び測定から得られた適切なデータ及び情報を分析し、評価することが求められています。

その評価対象には、製品及びサービスの適合、顧客満足、QMSのパフォーマンス及び有効性、計画の実施の有効性、外部提供者のパフォーマンス、QMSの改善の必要性などが含まれます。

ISO 9001:2026では、第3回で取り上げたリスクへの取組みと機会への取組みについても、その有効性を評価することが明確に位置付けられています。

ここで重要なのは、測定結果やKPIを集めることそのものではありません。

集めた情報から、「現在のプロセスは意図した結果を出しているか」「実施したリスクへの取組みは有効だったか」「機会への取組みは期待した成果につながったか」「改善が必要な領域はどこか」という判断につなげることが重要です。

データを保有していても、それが意思決定や改善に使われていなければ、QMSの評価として十分に機能しているとは言いにくくなります。

 

2.マネジメントレビューはQMSと経営判断をつなぐ

箇条9.3「マネジメントレビュー」では、トップマネジメントが、QMSが引き続き適切、妥当かつ有効であり、組織の戦略的な方向性と整合していることを確認するために、計画した間隔でレビューすることが求められています。

マネジメントレビューへのインプットには、外部及び内部の課題の変化、利害関係者のニーズ及び期待の変化、顧客満足、品質目標、プロセスのパフォーマンス、製品及びサービスの適合、外部提供者のパフォーマンスなどが含まれます。

附属書A.9.3では、マネジメントレビューについて、トップマネジメントがQMSの状態に関する情報を入手し、意思決定を行う際にその情報を考慮するプロセスであることが説明されています。

さらに、資源の必要性や改善の機会を含め、QMSに関する客観的事実に基づく意思決定を支援するものとされています。この考え方は、2026年版への移行でも重要です。

規格改訂への対応を品質部門だけで整理するのではなく、組織の状況、リスクと機会、必要な資源、変更の結果などをマネジメントレビューにつなげることで、「規格対応」と「経営上の判断」を分離せずに扱うことができます。

 

3.箇条10では継続的改善が前面に整理された

ISO 9001:2026の箇条10は、10.1「継続的改善」、10.2「不適合及び是正処置」という構成になっています。

継続的改善の目的は、組織のパフォーマンス及びQMSの有効性を向上させることです。

附属書A.10.1では、改善は、組織を取り巻く状況の変化、リスクや機会の変化、技術の採用などから生じる場合があることも説明されています。また、内部及び外部の変化に対応して、プロセス、知識及び資源を適応させることも改善活動に含まれ得ます。

これは、改善を不適合が発生した後の是正処置だけに限定しない考え方です。

顧客から得られた情報、プロセスのパフォーマンス、リスクと機会への取組み、変更の結果、マネジメントレビューなどから、より良い方法が見つかれば、それもQMSの改善につながります。

ISO 9001:2026への移行も、この継続的改善の一部として捉えることができます。

 

4.移行対応の出発点は「文書改訂」ではなく現在のQMSとの比較

ISO 9001:2026が正式発行されたからといって、現在使用している手順書や様式を一斉に変更する必要があるとは限りません。

まず行いたいのは、現在のQMSと2026年版の要求事項を比較することです。

今回のシリーズで取り上げた内容では、品質文化及び倫理的行動、リスクと機会、変更の計画について、現在の仕組みでどこまで対応できているかを確認します。

すでに実施している活動によって要求事項を満たしている場合もあります。

一方で、要求事項自体は理解していても、実際の業務プロセスにつながっていない部分が見つかる場合もあります。

したがって、ギャップを考える際には「新しい文書があるか」だけではなく、「現在どのプロセスで対応しているか」「誰がその役割を担っているか」「どの情報を使って判断しているか」「実施した結果をどのように確認しているか」という観点から現在のQMSを見ることが重要です。

 

5.これまでの4回の内容をつなぐQMSの全体像

ISO 9001:2026の改訂点は、互いに独立しているわけではありません。

品質文化及び倫理的行動は、トップマネジメントのリーダーシップだけに関係するものではなく、組織内の意思決定、コミュニケーション、問題への対応にも関係します。

リスクと機会は、箇条6.1で決定して終わるものではなく、実際のプロセスへ組み込み、箇条9.1で取組みの有効性を評価します。

変更の計画についても、変更を実施して完了するのではなく、変更後の有効性を監視・評価し、その結果をレビューします。

そして、これらの情報をマネジメントレビューで確認し、必要な資源や改善について意思決定することによって、箇条10の継続的改善へつながります。

つまり、ISO 9001:2026への移行で重要なのは、改訂された要求事項を一つずつ追加することではなく、

組織の状況→リスクと機会→計画及び変更→運用→評価→マネジメントレビュー→改善というQMS全体の流れが実際に機能しているかを確認することです。

 

6.移行期限から計画する

ISO/TC 176が2026年9月23日に公表した移行ガイダンスでは、ISO 9001:2015の認証を受けている組織は、2029年9月30日までにISO 9001:2026への移行を完了することとされています。移行は、予定されているサーベイランス、再認証、又は独立した移行の機会に実施できるとされています。

また、2028年3月31日以降、新規及び初回の認定されたISO 9001認証は、ISO 9001:2026に対してのみ発行されるとされています。

移行期限まで時間があるからといって、対応を後回しにする必要はありません。

一方で、規格が改訂されたことだけを理由に、短期間ですべての文書や仕組みを変更する必要もありません。

現在のQMSとの差分を確認し、必要な変更を決め、その変更を実施し、実施後の有効性を確認できる期間を考慮して計画することが重要です。

第4回で取り上げた箇条6.3「変更の計画」の考え方は、ISO 9001:2026への移行そのものにも活用できます。

 

まとめ

ISO 9001:2026への移行で重要なのは、規格の変更点を文書に追加することだけではありません。

箇条9で得られた情報を評価し、マネジメントレビューで意思決定につなげ、箇条10の継続的改善へ展開するというQMSの基本的な流れを使って、現在の仕組みを2026年版に合わせて見直すことが重要です。

今回の改訂で明確になった品質文化及び倫理的行動、リスクと機会、変更の計画についても、それぞれを独立した活動として追加するのではなく、既存のQMSの中でどのようにつながっているかを確認することができます。

ISO 9001:2026への移行は、規格改訂への形式的な対応にとどめるのではなく、現在のQMSが組織の目的、顧客要求、事業環境の変化に対して有効に機能しているかを確認する機会として捉えることができます。 

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