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    Sep 29, 2026

    変化に強いISOマネジメントシステム 第2回 設備を変更しても業務は安定して続けられるか ― 設備変更をISOマネジメントシステム全体の考え方で捉える

    序文

    企業では、生産性の向上、老朽設備の更新、省人化、省エネルギー化、品質の安定などを目的として、設備の新規導入、更新、改造、移設が行われます。近年では、設備そのものに加えて、制御ソフトウェアやネットワーク接続などの変更を伴うこともあります。

    新しい設備を導入すると作業方法、必要な力量、製造条件、検査方法、安全上のリスク、エネルギー使用、情報システムとの接続など、周辺の業務の変化が考えられます。

    厚生労働省の「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」では、設備を新規に採用又は変更するときを、リスクアセスメントを行う時期の一つとして示しています。また、設備の変更に伴う作業を開始する前に、必要なリスク低減措置を実施することへの留意も示されています。

    このような設備変更を考える際にも、ISOマネジメントシステムの考え方が役立ちます。設備だけを見るのではなく、その変更によって何が影響を受けるのかを確認し、必要な対応を行い、変更後の結果まで確認するためです。

    本稿では、設備変更という一つの経営上の変化を、ISOマネジメントシステム全体の考え方から捉えます。

     

    1.設備変更では「機械」だけを見ない

    設備変更には、新規設備への入替えだけでなく、増設、改造、移設、制御方法の変更なども含まれます。

    設備そのものの性能が向上しても、それを使用する工程全体まで同じように改善するとは限りません。

    設備の処理能力が上がれば、その前後の工程に滞留が生じることがあります。自動化によって手作業が減る一方で、設定変更、センサー確認、異常時の復旧など、新しい作業が発生することもあります。

    そのため、設備変更では、設備の仕様だけではなく、製造条件、作業方法、検査、保守、要員配置、教育、安全、環境、情報システムなどへの影響を確認することが重要です。

    ISO 9001:2015では、箇条6.3「変更の計画」、箇条7.1.3「インフラストラクチャ」などが、この考え方と関係します。

     

    2.導入前に「何を良くする設備なのか」を明確にする

    設備変更の目的が曖昧なままでは、導入後に改善できたかどうかを判断することも難しくなります。

    生産能力を高めたいのか、不適合を減らしたいのか、作業負担を軽減したいのか、エネルギー使用を抑えたいのかによって、変更後に確認する内容は異なります。

    設備変更をISOマネジメントシステムと結び付ける場合には、導入前に、変更の目的と影響する業務を整理しておくことが有効です。

    ISO 9001:2015の箇条6.3では、品質マネジメントシステムの変更を計画的に実施する考え方が示されています。また、ISOのマネジメントシステム規格に共通する箇条6「計画」、箇条8「運用」、箇条9「パフォーマンス評価」という流れを利用することで、変更前の目的と変更後の結果を関連付けて考えることができます。

    設備変更を「設備を入れたか」で終わらせず、「意図した改善につながったか」まで確認できるようにしておくことが重要です。

     

    3.品質への影響は設備能力だけでは判断できない

    設備変更では、生産能力や精度などが重要な検討事項になります。

    一方で、新しい設備が要求どおりの能力を持っていても、設定条件、測定方法、使用する治工具、保守方法などが変化すれば、製品・サービスの品質へ影響する可能性があります。

    測定や検査に使用する設備を変更する場合には、必要な測定能力が維持されているかという観点も必要です。

    この点は、ISO 9001:2015の箇条7.1.3「インフラストラクチャ」、箇条7.1.5「監視及び測定のための資源」、箇条8.5.6「変更の管理」などと関係します。

    設備変更後には、設備が動いていることだけではなく、不適合、手直し、処理時間、停止時間など、変更の目的に関係する結果を見ることが重要です。

     

    4.安全では設備変更そのものが確認の契機になる

    設備変更で特に注意したいのが、労働安全衛生への影響です。

    厚生労働省の「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」では、設備を新規に採用又は変更するときにリスクアセスメントを行うことが示されています。また、機械設備に関するリスクアセスメントでは、その設備について専門的な知識を持つ者を参画させるよう努めることも示されています。

    新しい設備では、危険箇所が減る場合がある一方で、清掃、保守、調整、異常復旧など、通常運転以外の作業に新しい危険が生じることもあります。

    そのため、安全性の確認を通常運転だけで終わらせず、設備停止時、保守時、異常時なども含めて考えることが重要です。

    この点は、ISO 45001:2018の箇条6.1.2「危険源の特定並びにリスク及び機会の評価」、箇条8.1.3「変更の管理」などと関係します。

    ISOを活用することで、設備導入を単なる設備投資としてではなく、作業条件が変化する機会として確認できます。

     

    5.環境負荷やエネルギー使用も同時に変わる

    設備変更は、環境面にも影響する場合があります。

    新設備によって電力使用量が減ることがある一方、使用する原材料、油、冷却水、洗浄剤、廃棄物などが変わることもあります。設備能力の向上によって、一台当たりの効率は改善しても、総稼働時間や生産量の増加によって組織全体の使用量が変化する場合もあります。

    そのため、設備仕様だけで「環境負荷が改善した」と判断せず、組織が管理している環境側面や環境パフォーマンスへの影響を確認することが重要です。

    ISO 14001:2026では、箇条6.3「変更の計画」が共通構造の中に明確に位置付けられており、箇条8.1「運用の計画及び管理」と合わせて、変更による環境マネジメントへの影響を考えることができます。

    エネルギーマネジメントを行う組織では、設備変更がエネルギーパフォーマンスに与える影響も確認対象となります。

     

    6.ネットワークにつながる設備では情報管理も確認する

    現在の設備は、単独で動作する機械だけではありません。生産管理システムへの接続、遠隔監視、保守会社によるリモート接続、クラウドサービスとの連携などを利用する設備もあります。

    設備変更によって新しい通信経路やアカウントが追加される場合には、設備の稼働だけでなく、情報セキュリティの観点も必要になります。

    誰が設定を変更できるのか、外部からどのように接続するのか、管理者権限を誰が持つのか、ソフトウェア変更をどのように管理するのかなどを確認します。

    この点は、ISO/IEC 27001:2022の箇条8.1「運用の計画及び管理」や、附属書AのA.8.32「変更管理」などと関係します。

    また、AIを利用した検査、判定、予知保全などを設備に導入する場合には、設備の性能だけではなく、AIの利用目的、出力結果の確認、役割と責任などについてISO/IEC 42001の考え方が関係する場合があります。

    設備変更を物理的な機械の入替えだけとして捉えないことが重要です。

     

    7.設備が稼働した後の状態まで確認する

    設備変更は、据付けや試運転が終了した時点で完了とは限りません。

    実際の運用を開始した後に、不適合や手直し、設備停止、作業時間、ヒヤリ・ハット、エネルギー使用などに変化がないかを確認することで、変更の目的が達成されているかを把握できます。

    問題が見られた場合には、設備そのものだけを原因とせず、設定条件、作業方法、教育、保守、要員配置など、関連する仕組みも含めて確認することが重要です。

    ISOマネジメントシステムでは、箇条9「パフォーマンス評価」や箇条10「改善」の考え方を、この確認に活用できます。

     

    まとめ

    設備変更は、単なる設備の入替えではなく、製造条件、作業方法、必要な力量、安全、環境、保守、情報システムなどが同時に変化する可能性があります。

    厚生労働省の指針でも、設備の新規採用や変更はリスクアセスメントを行う時期として明確に示されています。つまり、設備変更は、設備そのものだけでなく、設備を使用する業務全体を確認する契機と考えることができます。

    ISOマネジメントシステムを活用すれば、設備変更について、変更の目的と影響を確認し、必要な資源や力量、運用上の管理を整え、変更後の結果まで一連の流れで捉えることができます。

    重要なのは、「新しい設備を導入したから改善した」と判断することではありません。その設備変更によって意図した結果が得られ、品質、安全、環境、情報管理などに想定していなかった影響が生じていないかを確認することです。

    設備変更では、導入そのものよりも、変更によって生じる影響を把握し、必要な管理を見直し、その結果を確認できることが重要です。

     

    マネジメントシステムの認証に関するお問い合わせは、MS認証部 (japan@nemko.com)までご連絡ください。

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