ISO 45001認証を取得している企業にとって、現在注目すべきテーマの一つが規格改訂です。
特にISO 9001やISO 14001と統合マネジメントシステムを構築している企業では、「ISO 9001、ISO 14001、ISO 45001の改訂時期はどう違うのか」「3規格への対応をまとめて進めるべきか」といった疑問を持つ担当者も多いのではないでしょうか。
2026年8月27日時点では、ISO 14001:2026が2026年4月15日に発行済みである一方、ISO 9001の第6版は発行準備段階(Stage 60.00)にあり、ISOは2026年9月の発行を予定しています。これに対し、ISO 45001の次期版はまだDIS(Draft International Standard:国際規格案)の段階です。3規格の改訂スケジュールは同じではありません。
そこでNemko Japanでは、ISOが公開している公式情報をもとに、2026年8月27日時点のISO 45001改訂状況を整理します。
ISO 45001は正式な改訂作業が進行中
結論から言えば、ISO 45001は正式な改訂プロジェクトが進行しています。
現在発行されているISO 45001:2018について、ISO公式サイトではステージ90.92「International Standard to be revised」とされており、次期版となるISO/DIS 45001(Edition 2)が開発されています。
ISOの規格開発では、WD(Working Draft:作業原案)、CD(Committee Draft:委員会原案)、DIS(Draft International Standard:国際規格案)などの段階を経て開発が進み、必要に応じてFDIS(Final Draft International Standard:最終国際規格案)を経た後、国際規格として発行されます。ISOのステージコードでは、40.20は「DIS ballot initiated: 12 weeks」、すなわちDISの12週間投票が開始された状態を示します。
ISO中央規格台帳によると、ISO 45001の改訂版は2026年4月14日にCDからDISへの移行が承認され、4月17日にDISとして登録されました。その後、6月16日にDIS投票が開始され、2026年8月27日時点ではStage 40.20となっています。
つまり、現在は単に「将来改訂するかどうかを検討している」段階ではありません。具体的な次期規格案がDISとして提示され、各国のISOメンバーが内容を審議し、投票・コメントを行う段階まで進んでいます。ISO/TC 283も2026年6月、ISO 45001の改訂案が正式なDIS投票段階に進んだことを公表しています。
DIS投票の日付表記には注意
ISO/TC 283の2026年6月18日付ニュースには、DIS投票について「9/8/2026」まで投票・コメントを受け付けるとの記載があります。
一方、ISO中央規格台帳では、2026年6月16日に「12週間」のDIS投票を開始したことが明記されており、2026年8月27日時点のステージも40.20「DIS ballot initiated: 12 weeks」です。
このため、本記事では日付表記の解釈によって誤解が生じることを避け、ISO中央規格台帳のステータスを優先し、「2026年8月27日時点ではDIS投票段階にある」と整理します。
DISの投票結果や次の開発ステージについては、ISOが正式に中央規格台帳を更新した後に確認することが重要です。
新版の発行は2027年頃が想定されている
ISO/TC 283は2023年12月、ISO 45001の改訂が承認されたことを公表した際、改訂版の発行は2027年頃になるとの見通しを示しています。
ただし、これは発行予定時期についての見通しであり、2026年8月27日時点でISOが確定した発行日を公表しているわけではありません。
DISへの投票やコメントの結果によって原案が修正される可能性があり、その後の開発経路によってはFDISなどの段階を経ることもあります。
したがって、現時点で「ISO 45001:2027が特定の月に発行される」と断定することは適切ではありません。
現段階では、「改訂版は2027年頃の発行が想定されているが、正式な発行時期は未確定」と理解しておくのが適切です。
現在発行されている規格はISO 45001:2018
改訂作業が進んでいるからといって、ISO/DIS 45001が現在の正式な国際規格になったわけではありません。
現在発行されているISO 45001の国際規格は引き続きISO 45001:2018です。ISO公式ページでも、ISO 45001:2018は現行の発行済み規格として掲載され、次期版のISO/DIS 45001が開発中であることが示されています。
したがって、ISO/DIS 45001を既に確定した要求事項として扱うことは適切ではありません。
2024年の「Climate action changes」は既に現行規格への要求事項
ISO 45001についてもう一つ注意したいのが、ISO 45001:2018/Amd 1:2024「Climate action changes」です。
この追補は2024年2月23日に発行され、ISO 45001:2018に適用されています。
この変更では、組織の状況に関する箇条4.1において、組織が「気候変動が関連する課題であるかどうか」を判断することが求められるようになりました。また、関連する利害関係者が気候変動に関する要求事項を持つ可能性があることについても、箇条4.2に注記が追加されています。
これは将来発行されるISO 45001改訂版への「先行準備事項」ではありません。ISO 45001:2018に適用されている既発行の追補であるため、現行の労働安全衛生マネジメントシステムの中で考慮する必要があります。
気候変動と労働安全衛生についてはISO/PAS 45007:2026も発行
気候変動に関連して、ISO/TC 283では2026年1月にISO/PAS 45007:2026「Occupational health and safety management — Risks arising from climate change and climate change action — Guidance for organizations」も発行しています。
ISO/PAS 45007:2026は、気候変動そのものだけでなく、気候変動への適応策や緩和策によって生じる可能性のある労働安全衛生上のリスクと機会について、組織が体系的に検討するためのガイダンスです。
例えば、気候変動への適応に伴う作業方法・作業プロセスの変更やインフラ改修、気候変動緩和策に関連して新たに生じる労働安全衛生リスクなども対象とされています。
ISO/PAS 45007:2026はISO 45001の認証要求事項を追加する規格ではありませんが、ISO 45001:2018/Amd 1:2024の気候変動に関する検討を実務に落とし込む際の関連情報として注目する価値があります。
今すぐISO/DIS 45001に合わせてマネジメントシステムを変更する必要はない
ISO 45001認証を取得している企業にとって重要なのは、DIS段階の内容を確定した要求事項として扱わないことです。
DISは国際規格案であり、最終的な国際規格の発行までに内容が変更される可能性があります。
したがって、2026年8月27日時点でISO/DIS 45001だけを根拠として、既存の規程、手順、帳票、監査チェックリストなどを全面的に変更する必要はありません。
まず優先すべきなのは、現行のISO 45001:2018およびISO 45001:2018/Amd 1:2024に基づく労働安全衛生マネジメントシステムを適切に維持・運用することです。
一方、改訂作業が既にDISまで進んでいることから、今後のISO公式情報を継続的に確認し、正式版が発行された際に自社のマネジメントシステムへの影響を速やかに評価できる体制を整えておくことは有効です。
ISO 9001・ISO 14001との統合マネジメントシステムではどう考えるか
ISO 9001、ISO 14001、ISO 45001を統合して運用している企業では、3規格の改訂時期が異なることに注意が必要です。
2026年8月27日時点では、ISO 14001:2026は既に2026年4月15日に発行されています。一方、ISO 9001の第6版はStage 60.00「International Standard under publication」で、ISOは2026年9月の発行を予定しています。ISO 45001はまだStage 40.20のDIS段階です。
このため、「3規格が同時に改訂されることを待ってから、一度に対応する」という前提で計画を立てることは適切ではありません。
各規格について、正式版の発行時期、変更内容、認証移行に関する正式な条件を個別に確認したうえで、共通するプロセスや文書については統合マネジメントシステム全体として効率的に対応することが重要です。
特にISO 45001については、現時点では正式版も認証移行条件も確定していません。DISの段階でISO 9001やISO 14001の移行計画と無理に一本化せず、今後の正式情報を確認して判断することを推奨します。
Nemko Japanからお伝えしたいこと
2026年8月末時点で、ISO 45001の改訂は正式に進行しており、次期版はISO/DIS 45001(Edition 2)としてDIS投票段階にあります。
一方、現在発行されている国際規格は引き続きISO 45001:2018であり、DISの内容を確定した要求事項として扱う段階ではありません。
また、ISO 45001:2018/Amd 1:2024による気候変動への考慮は、将来の改訂を待って対応する事項ではなく、既に現行規格に適用されています。
ISO 9001、ISO 14001、ISO 45001を統合して運用する企業にとっては、3規格それぞれの開発・発行・移行スケジュールを正確に把握し、確定情報に基づいて変更管理を進めることが重要です。
Nemko Japanでは、認証機関としてISOおよび関連する公的・公式情報を継続的に確認し、ISO 45001認証企業および認証取得を検討されている企業の皆様に、正確な最新情報をお伝えしていきます。
次回は、ISO/TC 283が公開している情報をもとに、「次期ISO 45001では何が変わろうとしているのか」について整理します。
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