ISO 9001:2025 DIS発行 ― 改正のポイントと認証取得企業が注視すべき対応
2025年8月27日付で、品質マネジメントシステム規格 ISO 9001:2025 の改正に向けた 国際規格案 (DIS: Draft International Standard) が発行されました。
既にISO 9001認証を取得されている企業のご担当者や責任者にとって、今回の改正は自社のマネジメントシステムの見直しや将来対応に直結する重要な動きとなります。
Nemkoでは、発行された DISを元に2015年版からの変更点を整理しました。 本記事では、改正の背景と主要な変更点、企業が今から準備すべき対応について解説します。

1. 改正の背景
ISO 9001は、全世界で最も普及しているマネジメントシステム規格であり、約100万件以上の認証が存在します。前回の改正(2015年版)から10年が経過し、以下の観点から改正の必要性が指摘されてきました。
- サプライチェーンのグローバル化
- デジタル化・AIの進展
- サステナビリティやESGへの期待
- リスクと機会のダイナミックな変化
今回のDIS発行は、こうした社会的背景に対応し、ISO 9001をより実践的かつ将来志向のある規格にアップデートすることを目的としています。
2. 主な改正内容
(1) リーダーシップとガバナンスの強化
- トップマネジメントの役割を一層明確化
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「品質方針」と「組織の戦略方向性」の統合がより強調
(2) リスク及び機会のマネジメントの拡張
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2015年版で導入された「リスクに基づく考え方」が、より実践的なアプローチに発展。
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サプライチェーンの不確実性、サイバーリスク、外部要因の動的変化を明示的に考慮することを要求。
(3) サステナビリティの要素を反映
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環境・社会的側面への対応が品質マネジメントシステムの一部として位置づけられた。
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製品・サービスが社会へ与える影響を考慮する要求が追加。
(4) 知識マネジメントとデータ活用
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「組織の知識」(7.1.6) の要求が拡張され、デジタルデータ、AIツール、ビッグデータを含む情報資産の管理が求められる
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サイバーセキュリティとの連携も重視
(5) パフォーマンス評価と顧客満足
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顧客満足に加え、利害関係者全体の満足度を考慮する方向性が明示
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継続的改善のアプローチが「レジリエンス(強靭性)」確保と関連付けられた
3. 組織が注意すべきポイント
すでにISO 9001:2015を運用している企業は、直ちに認証が無効になるわけではありません。しかし、今後数年以内に2025年版への移行が求められることが想定されます。移行審査の準備を円滑に進めるため、次の点を意識すると良いでしょう。
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方針と戦略の整合性確認
品質方針が企業の長期戦略やサステナビリティ方針と一貫しているかを点検
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リスク及び機会の再評価
サプライチェーンの不確実性、デジタルリスク、気候変動リスクを含めて見直し
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利害関係者分析の拡張
顧客だけでなく、地域社会、従業員、規制当局なども視野に入れた分析を強化
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データ・知識マネジメントの整備
IT基盤や情報管理体制を強化し、品質改善にデータを活用できる仕組みを構築
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サステナビリティ対応の統合
環境や社会的側面を品質マネジメントに組み込み、企業のCSR活動やESG報告とも連動させる
4. 今後のスケジュール
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2025年8月27日: DIS発行
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2026年: FDIS(最終国際規格案)、ISO 9001:2026 正式発行見込み
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移行期間: 3年間程度が想定されており、2029年前後には2015年版が失効する可能性があります
まとめ
ISO 9001改正は、単なる規格更新ではなく、企業の経営基盤を次世代に向けて強化する絶好の機会です。特に、サステナビリティやデジタル化対応を含めた新しい要求事項は、企業価値を高めるための重要な視点となります。
Nemkoでは、最新の規格動向を踏まえたギャップ分析、規格解説セミナーなどを順次ご提供予定です。
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