マネジメントシステム認証の信頼への取り組み
1986年に初の品質システム規格としてISO 9001が発行されてから40年近く、日本で1989年に日本適合性認定協会(JAB)が設立されてから35年以上が経過しました。 この歴史の中で、マネジメントシステム規格は、ISO 14001(環境)、ISO 45001(労働安全衛生)、ISO 22000(食品安全)、ISO/IEC 27001(情報セキュリティ)など様々な規格へと広がり、日本国内でも多くの企業でマネジメントシステム認証が取得されています。
Nemkoは、ノルウェーに本部を置く第三者認証機関として、ノルウェー認定協会(NA)より『MSYS001』としてマネジメントシステム認証機関として認定され、ヨーロッパを中心に、日本やアメリカなど世界各国でマネジメントシステム認証を提供しています。 認証制度において、『信頼性』は何物にも代えられない最重要事項であり、Nemkoはグローバル認証機関として、信頼性の確保に取り組んでいます。

1. 認証機関の独立性・公平性に疑義が生じる事例
ISOなどのマネジメントシステム認証を取得する際、企業は第三者認証機関による審査を受けます。ところが近年、日本国内では一部の海外認証機関と提携した代理業者において、独立性や公平性に問題のある運営が確認されています。
具体的には、コンサルタント会社や個人が認証機関の下請け審査機関、審査員となり、コンサルティングと認証審査を一括で請け負うケースや、同一人物が自ら支援した組織の審査を担当するケースが報告されています。
このような行為は国際規格で厳しく禁じられており、ISO/IEC 17021-1(認証機関に対する要求事項)の中でも「認証機関はマネジメントシステムのコンサルティング機関に審査を外部委託してはならない」「コンサル業務を行った要員は最低2年間、その組織の審査に関わってはならない」と明記されています。
しかし、認証を受ける企業側は、そのようなルールを知らないケースもあり、「相談に乗ってくれた人がそのまま審査もしてくれるなら安心だ」と考えてしまい、この問題に気付かない場合が少なくありません。
公平性が損なわれる事例は他にも存在します。例えば、本来中立であるべき審査員が審査の場で自社のコンサルサービスを売り込むような行為です。ある企業の報告では、「審査員による審査中のコンサル営業は公式に禁止されているにもかかわらず、堂々と『自分もコンサルできます』と営業され困惑した」というケースもありました。また、本来は審査ごとに新たな視点で改善点を指摘してもらうのが理想ですが、不適切な運用では毎回同じ審査員が形骸化した審査を繰り返し、マンネリ化してしまう例もあります。
これらはすべて認証機関とコンサルタントの利益相反によるものです。
2. 公平性を欠いた認証が企業にもたらすリスク
一見すると「コンサルと審査をワンストップでお願いできて楽」と思えるかもしれませんが、こうした公平性を欠いた認証を受けてしまうことは企業に将来的なリスクをもたらします。
まず挙げられるのが、認証そのものの信頼性が低下するリスクです。審査員と組織の間に利害関係がある場合、審査が甘くなり不適合が見逃される恐れがあります。その結果、「認証は持っているが実態は規格を満たしていない」という形だけのマネジメントシステムになってしまい、本来の品質向上・リスク低減の効果が得られません。例えば2018年には、大手認証機関が資格のない審査員を使うなど不適切な審査を行ったために、日本適合性認定協会(JAB)から認定を取り消される事態も起きています。このように認証機関が問題を起こせば、その機関から発行された認証の信用は揺らぎ、最悪の場合は企業が取得した認証の取消しや再審査を余儀なくされるでしょう。
また、公平性に疑義のある認証機関で取得したISO認証は、ビジネスパートナーや市場から信頼されない可能性があります。例えば、現在利用中の認証機関が正式な認定を受けていなかったり、国際的な相互承認に参加していない認定機関の認証であった場合、他の信頼できる認証機関へスムーズに切り替えることが難しくなります。取引先から「その認証は本当に有効なのか?」と疑問を持たれれば、せっかく認証取得に費やしたコストと時間が無駄になるばかりか、企業の信用まで損ないかねません。さらに、マネジメントシステムが実質的に機能していない状態では、不良や事故、情報漏えいなどのリスクが高まり、それが発覚すれば「形だけのISOを取っていた」こと自体が社外から厳しい目で見られるでしょう。
3. マネジメントシステム導入と第三者認証の本来のメリット
そもそも企業がISOなどマネジメントシステム認証を取得・導入する目的は、単に認証書を飾るためではなく、組織の管理体制を国際標準に照らして見直し、改善することにあります。その本来得られるメリットを正しく享受するためには、形骸化した運用ではなく、規格の要求事項に沿った真摯な取り組みが必要です。例えばISO 9001(品質)であれば「製品やサービスの品質管理の仕組みを整え、継続的な改善によって顧客の信頼を得る」ことができます。ISO 14001(環境)であれば「環境保全の取り組みを体系化し、法規制順守や環境負荷低減を図れる企業としてステークホルダーから信頼を得る」効果があります。ISO 45001(労働安全衛生)であれば、「労働安全衛生上のリスクを見積もり、管理策を徹底することで、労働災害の発生を未然に防ぐ」効果があります。また、ISO/IEC 27001(情報セキュリティ)なら「情報管理のルールや意識が国際水準で徹底されている」という安心感を与えることができます。いずれの規格でも共通するのは、社外には信頼性のアピールとなり、社内には業務プロセスの見直しと体制整備による効率化という二面のメリットが得られる点です。
マネジメントシステム規格はPDCAサイクル(Plan=計画・Do=実行・Check=評価・Act=改善)に基づいており、正しく運用すれば継続的な改善の仕組みが組織に根付きます。例えばISO 9001では定期的な内部監査やマネジメントレビューを通じて問題点を洗い出し、対策を講じることで製品品質や業務プロセスが少しずつ向上していきます。その結果、お客様からの信頼を維持しやすくなり、クレームや手直しの減少によるコストダウン、従業員の意識向上といった経営上のプラス効果も生まれます。このように、マネジメントシステムの導入は本来企業体質の強化につながる投資です。しかしその効果は、公正な第三者審査によってはじめて保証されることを忘れてはなりません。適切な指摘や改善提案を受けてこそ、認証取得の意義が生きてくるのです。
4. 信頼できる認証機関の選択 – Nemkoの取り組み
では、企業はどのようにして信頼できる認証機関を選べば良いのでしょうか。ポイントの一つは、その認証機関が公平性を重視し、適切な認定を受けているかを確認することです。認証機関のウェブサイトや認定シンボルを調べ、IAF(国際認定フォーラム)の相互承認に加盟する認定機関からの認定を持つ機関を選ぶと安心です。また、その認証機関自体の歴史や実績、属するネットワークも信頼性の判断材料になります。例えばNemkoは1933年にノルウェー政府によって設立された「NEMKO(ノルウェー電気機器管理協会)」を前身とする認証機関で、もともとノルウェーの国家的な試験認証機関でした。長い歴史の中で培われた技術力と中立性により、現在では世界各国で製品認証やマネジメントシステム認証サービスを提供しています。また、Nemkoはノルウェー認定機関からマネジメントシステム認証機関第1号(認定番号: MSYS001)として認定を受けた実績があり、その国際的な信用は非常に高いものがあります。
さらに、Nemkoは国際認証ネットワークIQNetの唯一のノルウェー代表メンバーでもあります。IQNetは世界各国の主要な認証機関が加盟するネットワークであり、加盟機関同士で認証書の相互承認を行っています。IQNetメンバーであるということは、発行された認証書が世界中で通用しやすく、品質の代名詞として知られていることを意味します。つまりNemkoで取得した認証はグローバルにも高い信頼性を持つと言えるでしょう。
認証機関を選ぶ際には、審査員の質や教育体制も重要です。第三者認証の価値は審査員の力量にかかっているため、信頼できる機関は審査員の育成に力を入れています。Nemkoの場合、新たに加わる審査員に対して基礎研修や現場でのOJT、年次の集合研修など体系的な教育プログラムを実施しており、常に審査スキルの向上と公平性の維持に努めています。特に主任審査員(審査チームリーダー)に任命するまでには最低でも2年以上の訓練期間を設け、十分な経験を積ませています(※)。こうした厳格な人材育成により、どの審査でも一定水準以上の質と独立性が担保されるのです。
※ 上記の「2年以上の訓練期間」は、Nemko独自の内部基準に基づく目安です。実際には審査員候補の経験や適性に応じて段階的に権限付与を行い、慎重に主任審査員を育成しています。
最後に、公正で有意義な審査を提供してくれる認証機関とパートナーシップを築くことが、マネジメントシステム導入の成功につながります。不適切な運用に流されず、第三者認証の本来の価値を引き出してくれる機関を選ぶことが重要です。その意味で、Nemkoのように歴史・実績があり、国際的ネットワークに裏打ちされた信頼性を持つ認証機関は有力な選択肢と言えるでしょう。企業の経営者・担当者の皆様には、ぜひ認証機関選びの段階から公平性に着目していただき、「取って終わり」の認証ではなく「使える認証」を取得して、自社の持続的な発展に役立てていただきたいと思います。
マネジメントシステム認証に関するお問い合わせは、
Nemko Japan MS認証部まで、お気軽にご相談ください。

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