医療機器の品質マネジメントシステム(QMS)に関する国際規格であるISO 13485。
ISO 9001: 2026の発行が間近に迫り、ISO 13485認証を取得している企業や、これから認証取得を検討している企業にとって、「ISO 13485は近いうちに改訂されるのか」「新版への移行に備えて、今から対応が必要なのか」は重要な関心事項です。
Nemko Japanでは、2026年8月末時点で公開されているISOおよびISO/TC 210の公式情報を確認しました。
結論から言えば、現在の最新版は引き続きISO 13485:2016であり、ISO公式ページでは同規格のステージは90.93(International Standard confirmed)とされており、ISO 13485本体について新たな改訂プロジェクトが開始されたことを示す公開情報は、現時点では確認されていません。
ISO 13485:2016は2025年の定期見直しで「継続」が決定
ISO規格は、発行後もSystematic Review(定期見直し)の対象となり、現行版を維持するか、改訂するか、廃止を検討するかなどが確認されます。
ISO 13485:2016については、2025年1月15日にSystematic Reviewが開始され、同年6月5日にレビューが終了しました。その後、2025年10月31日にステージ90.93「International Standard confirmed」となり、現行版を維持することが確認されています。
ISO公式ページにも、「2025年にレビューおよび確認され、この版が引き続き現行版である」ことが明記されています。
ISOが公開するステージコードでは、90.93は「International Standard confirmed」を意味します。一方、規格を改訂するとの判断を示すステージは90.92「International Standard to be revised」です。2026年8月27日時点でISO 13485:2016は90.93であり、「改訂することが正式決定された状態」とは明確に区別する必要があります。
したがって、現時点でISO 13485認証を取得している企業が、「ISO 13485の新版発行が決定した」との前提で移行対応を開始しなければならない状況にはありません。
一方で、将来の改訂可能性についての評価は行われている
「正式な改訂プロジェクトが開始されていない」ことと、「将来の改訂について検討されていない」ことは同じではありません。
ISO 13485を担当するISO/TC 210では、2022年12月の会議でISO 13485:2016の将来的な改訂に関連する準備について議論が行われました。その後、2023年には医療機器分野のステークホルダーを対象とした調査が実施されています。
この調査では、ISO 13485の規制目的での利用状況、改訂によって期待される利点や考えられる悪影響、各国・地域の規制モデルとの関係などについて意見が収集されました。ISO/TC 210は、改訂が必要と判断された場合には、調査結果を新たな規格の設計仕様の検討に活用すると説明しています。
また、2026年8月現在、ISO/TC 210の公開作業体制には「ISO/TC 210/AHG 4 – Assessment of ISO 13485」が掲載されています。名称が示すとおり、ISO 13485を評価するためのアドホックグループです。
ただし、この評価活動やアドホックグループの存在そのものをもって、ISO 13485の改訂が正式に開始されたと判断することは適切ではありません。ISO公式ページでISO 13485:2016は引き続き90.93(Confirmed)とされています。
注目すべきは、ISO/TS 23485として開発中のガイダンス文書
ISO 13485本体とは別に、今後注目しておきたい動きとして、ISO/TS 23485「Medical devices — Quality management systems — Guideline for the application of ISO 13485:2016」の開発があります。
2026年8月27日時点では、正式発行済みのISO/TS 23485ではなく、「ISO/CD TS 23485」として開発中です。
この文書は、ISO 13485:2016の要求事項の意図についてガイダンスを提供するとともに、組織が要求事項を満たすために取り得る対応例を示すことを目的としています。
ISO公式ページでは、ISO/CD TS 23485は2026年7月16日にステージ30.99「CD approved for registration as DIS」、すなわちCommittee Draft(CD)がDraft International Standard(DIS)として登録されることが承認された段階に進んだことが示されています。
ここで重要なのは、ISO/CD TS 23485がISO 13485:2016の要求事項を追加、削除または変更するものではないとISOが明示している点です。また、特定の実施方法を義務付けたり、特定の解釈を優先的なものとして定めたりする文書でもありません。
したがって、ISO/TS 23485の開発を「ISO 13485そのものの改訂」と混同しないことが重要です。また、現在は開発段階にあるため、最終発行までに内容や開発状況が変更される可能性があります。
日本企業が併せて確認したいQMS省令
日本市場で医療機器を取り扱う企業にとっては、ISO 13485の動向だけでなく、日本のQMS省令との関係も重要です。
厚生労働省は2021年3月26日、医療機器の品質マネジメントシステムに関する国際規格ISO 13485:2016との整合を図ることを目的として、「医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」(QMS省令)を改正しました。
厚生労働省の運用通知では、改正QMS省令の第2章はISO 13485:2016と調和した基本的要求事項と位置付けられる一方、第3章以降には国内における医療機器等の品質確保を目的とする追加的要求事項が含まれることが示されています。
このため、日本で事業を行う企業は、ISO 13485認証への適合だけでなく、自社に適用されるQMS省令および国内固有の要求事項についても確認することが重要です。
また、ISO 13485本体が改訂されていない場合でも、国内の法令や運用通知が変更されることがあります。実際に厚生労働省は2025年1月31日にもQMS省令の運用に関する通知を一部改正しています。規格改訂情報と国内規制情報は、分けて継続的に確認することが重要です。
ISO 13485認証企業は今、何をすべきか
現時点では、まだ正式に決定していない将来の改訂を予測して、自社のQMSを先行して変更する必要はありません。
まず重要なのは、現行のISO 13485:2016に基づくQMSが、自社の製品、プロセス、関連するリスク、および適用される法規制要求事項に照らして有効に運用されているかを継続的に確認することです。
一方で、ISO/TC 210によるISO 13485の評価活動、ISO/CD TS 23485の開発状況、日本国内のQMS関連法令・通知については、継続して確認しておくことを推奨します。
将来、ISO 13485の改訂プロジェクトが正式に開始された場合には、ISO公式の規格ページやISO/TC 210の作業計画に開発プロジェクトとして反映されます。規格開発ではWD(Working Draft)、CD(Committee Draft)、DIS(Draft International Standard)などの段階が用いられますが、プロジェクトの種類や開発経路によって一部の段階が省略される場合があります。
Nemko Japanからお伝えしたいこと
2026年8月末時点では、「ISO 13485:2016は2025年に定期見直しを経て確認され、現在も有効な最新版である」というのがISO公式情報に基づく正確な状況です。
一方で、ISO/TC 210ではISO 13485の将来に関する評価活動が行われており、ISO 13485:2016の適用を支援するISO/TS 23485の開発も進められています。
重要なのは、これらの動きを「ISO 13485の改訂が正式に開始された」と混同しないことです。
Nemko Japanでは、認証機関として今後もISOおよび関連する公的機関の情報を確認し、ISO 13485認証を取得している企業、および認証取得を検討されている企業の皆様に、正確な情報をお伝えしていきます。
ISO 13485認証、ISO 13485に関するセミナー等のお問い合わせは、MS認証部 japan@nemko.comまでご連絡ください。